ベネズエラの国民投票、ガイアナの領土併合に9割超が賛成 緊張が高まる
2023年12月3日、ベネズエラでは、隣国ガイアナのエセキボ地域の領有権を問う国民投票が行われた。結果は、約90%の有権者が「ガイアナとの紛争中の領土の防衛」に賛成したと発表された。この国民投票は、ベネズエラのマドゥーロ大統領が主導したもので、国際的には非公式なものとみなされている。しかし、ベネズエラはこれをもって、エセキボ地域の併合を正当化しようとしている。
エセキボ地域とは
エセキボ地域は、ガイアナの国土の約70%にあたる面積15万平方キロメートルの地域である。この地域は、石油や金などの鉱物資源が豊富に埋蔵されており、経済的にも戦略的にも重要な価値を持っている。しかし、この地域の領有権は、ベネズエラとガイアナの間で長年にわたって争われてきた。
領土問題の歴史
ベネズエラとガイアナの領土問題は、19世紀にさかのぼる。当時、ガイアナはイギリスの植民地であったが、ベネズエラはスペインからの独立後、エセキボ地域を自国の領土と主張した。1899年には、アメリカの仲介によって、エセキボ地域の大部分をイギリスに割譲するという仲裁判決が下されたが、ベネズエラはこれを受け入れなかった。1966年には、ガイアナがイギリスから独立したが、ベネズエラは依然としてエセキボ地域の領有権を主張し続けた。1970年には、両国はジュネーブ協定に調印し、平和的な解決を目指すことに合意した。しかし、その後も両国の対立は続き、1999年には、ガイアナがエセキボ地域で石油開発を始めたことで、ベネズエラは強く反発した。2015年には、ガイアナがエクソンモービルと契約し、エセキボ地域の沖合で大規模な石油埋蔵量を発見したことで、両国の緊張はさらに高まった。2018年には、ガイアナが国際司法裁判所(ICJ)に領土問題の解決を求めたが、ベネズエラはこれを拒否した。2020年には、ICJがガイアナの訴えを受理したが、ベネズエラはこれにも反対した。2021年には、ベネズエラがエセキボ地域の一部を占領し、ガイアナの漁船を拿捕するなどの挑発的な行動をとった。これに対して、ガイアナは国際社会に支援を求め、アメリカやイギリスなどの国々からの支持を得た。
国民投票の意義と影響
ベネズエラの国民投票は、エセキボ地域の併合を目指すマドゥーロ大統領の政治的な演出であると言える。ベネズエラは、深刻な経済危機や社会不安に直面しており、マドゥーロ大統領は、国民の不満を外部に向けることで、自らの権力を維持しようとしている。また、エセキボ地域の石油資源を手に入れることで、ベネズエラの財政を改善しようという狙いもあると考えられる。しかし、この国民投票は、国際的には無効であるとみなされており、ガイアナはもちろん、アメリカやイギリスなどの国々もこれを認めないだろう。むしろ、ベネズエラは、国際社会からの孤立や制裁を招くことになり、エセキボ地域の併合はますます困難になると予想される。また、ベネズエラが軍事的な行動に出る可能性も否定できないため、両国の間の緊張は今後も高まることが予想される。南米の平和と安定にとって、この領土問題は深刻な課題であると言えるだろう。