2022年は、債券市場にとって厳しい年となった
2022年は、世界の債券市場にとって厳しい年となりました。欧米を中心にインフレが進行し、各国の中央銀行が金融引き締め政策として利上げに踏み切りました。これにより、債券価格は大きく下落し、投資家のリスク回避意欲も低下しました。
特に日本国債は、2022年3月から12月末までに30年債利回りが1.725%と9年ぶりの高水準に上昇しました1。日本銀行がマイナス金利政策の解除を示唆したことや、国債を大量保有している金融機関や機関投資家が損失回避のために売却に動いたことが要因となりました2。
日本国債の下落は、世界の債券市場にも影響を与えました。JPモルガン・チェースのストラテジストは、日本の銀行や保険会社、年金基金などが外国債券の売却や為替ヘッジの解消に動く可能性があり、日本以外の主要国債市場に波及するリスクが高まると指摘しました3。
また、債券市場の下落は、株式市場や為替市場にも連動する恐れがあります。債券の利回りが上昇すると、株式の割安感が減少し、株価に下押し圧力がかかります。また、日本の金利上昇により、円高が進むと、日本の輸出企業の収益に悪影響を及ぼします。
2023年の展望
2023年に入っても、債券市場の動向には注意が必要です。米国では、雇用統計や物価指数などの経済指標が注目されます。2022年12月の雇用統計は、予想を下回る伸びとなりましたが、失業率は3.9%と低下し、賃金は上昇しました4。これは、労働市場が過熱しており、インフレ圧力が継続していることを示しています。
日本では、日本銀行が金融政策の見直しを行うかどうかが焦点となります。日本銀行は、2022年12月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の継続を決めましたが、植田和男総裁は、持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、マイナス金利政策の解除も含めていろいろなオプションがあると語りました。日本銀行が金融緩和の出口戦略を示すと、債券市場は再び揺れる可能性があります。
債券投資は、定期的な利子収入や満期時の額面金額の返済が期待できる安全な投資先とされてきましたが、金利上昇による価格変動のリスクも無視できません。債券投資を行う場合は、金利動向や債券の残存期間などに注意しながら、適切な資産配分やリスク管理を行うことが重要です。