米PCE、コア価格指数が予想下回る伸び-利下げ観測を後押し
11月の米個人消費支出(PCE)統計は、食品とエネルギーを除くコアベースでの価格指数の伸びが市場予想を下回り、来年の米利下げ見通しを強める内容となった。
キーポイント
- PCEコア価格指数は前月比0.1%上昇
- 市場予想は0.2%上昇
- 前月は0.1%上昇(速報値0.2%上昇)に下方修正
- 前年同月比では3.2%上昇
- 市場予想は3.3%上昇
- PCEは前月比0.2%増
- 市場予想は0.3%増
- 前月は0.1%増(速報値0.2%増)に下方修正
- インフレ調整後の実質PCEは前月比0.3%増
- 市場予想と一致
- 前月は0.1%増(速報値0.2%増)に下方修正
- 個人所得は前月比0.4%増
- 市場予想と一致
コア価格指数は6カ月間の年率ベースでは上昇率が1.9%と、米金融当局が目標とする2%を若干ながら下回った。
物価上昇圧力の持続的な緩和と家計需要の底堅さは、景気がソフトランディング(軟着陸)するという見通しと整合している。インフレ率が当局の目標に達したことも、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長ら当局者が今後数四半期での利下げを示唆した根拠を支える。
11月のPCE総合価格指数は前月比0.1%低下となり、2020年4月以来のマイナスを記録した。前年同月比では2.6%上昇と、21年2月以来の小幅な伸び。
ただ、11月は個人所得の伸びが堅調だったため、これが消費支出の活発化につながり、米金融当局が状況を見極めてから緩和に踏み切る可能性もある。
チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「インフレ率を目標の2%に下げるのに十分なことをしたと、米金融当局は確信しているに違いない」と指摘。「利上げサイクルは終わり、利下げ開始は時間の問題だとパウエル議長が示唆したのも驚きではない。FRBは今後、いくつかのデータから利下げ時期や利下げ幅を見極めるだろう」と語った。
米金融当局が注目する住宅とエネルギーを除くサービス業の価格指数は、2カ月連続で前月比0.1%上昇にとどまった。
一方で支出の持ち直しは、借り入れコスト上昇にもかかわらず、家計が経済を前進させる力になり続けられることを示唆している。鈍化しつつもなお底堅い雇用市場が需要拡大の主要な原動力であることに変わりはない。
個人消費を支える実質可処分所得は0.4%増加と、3月以来の大きな伸びとなった。
インフレ調整前の賃金・給与は0.6%増で、こちらも8カ月ぶりの大幅増。貯蓄率は4.1%に上昇した。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、スチュアート・ポール氏は「総合価格指数の低下、緩やかかつ下方修正されたコア価格指数の伸び、支出を上回る所得の増加は、政策当局者にとって年末の贈り物となった」と指摘。「しかし、企業が在庫削減に成功し(それによって後々の値下げを回避できる)、労働市場が予想通りに冷え込めば、2024年の利下げは一部で見込まれているような完璧なディスインフレが要因ではなく、活動の鈍化が理由となるかもしれない」と語った。