日本が米国にパトリオットミサイルを輸出する意義と背景
日本政府は、22日に改正する防衛装備移転3原則と運用指針に基づき、国内で製造する地対空誘導弾パトリオットミサイルを米国に輸出する方針を決めた。これは、改正後、初の輸出事例となる見通しである1。
パトリオットミサイルは、米国のレイセオン社が開発した地対空ミサイルシステムで、敵の弾道ミサイルや航空機を迎撃することができる。日本は、北朝鮮のミサイルの脅威に対抗するため、自衛隊が保有するパトリオットミサイル3(PAC3)や、旧式のPAC2を米国にライセンス料を支払って国内で生産している2。
現行制度では、ライセンス生産品の輸出は厳しく制限されているが、22日の改正でこれを大幅に緩和する。完成品の輸出も可能となるため、政府は早期にミサイルの輸出手続きに着手する方針だ1。
この輸出には、米国の要請が大きく影響している。米国は、ロシアとの緊張が高まる中、ウクライナやポーランドなどの同盟国に対する軍事支援を強化しているが、パトリオットミサイルの在庫が不足しているという問題に直面している3。
日本が米国にパトリオットミサイルを輸出することで、米国は自国の在庫を補充するとともに、第三国への移転も容易になる。これにより、米国はロシアに対する抑止力を高めることができる4。
日本にとっても、パトリオットミサイルの輸出は、米国との同盟関係を強化するというメリットがある。日本は、米国との安全保障条約に基づき、米国の核の傘の下にあるが、その代償として、米国の軍事戦略に協力することが求められる5。
パトリオットミサイルの輸出は、日本が米国の軍事戦略に貢献することを示すとともに、米国の信頼を得ることができる。また、日本は、米国とともにインド太平洋地域の平和と安定に寄与することをアピールすることができる6。
一方、パトリオットミサイルの輸出には、慎重な管理が必要である。政府は、輸出したミサイルが米経由でウクライナに渡らないよう、米側に管理の徹底を求める考えだ1。
また、日本は、パトリオットミサイルの輸出によって、ロシアとの関係が悪化することを避ける必要がある。日本は、北方領土問題の解決や経済協力などを目指して、ロシアとの対話を続けているが、パトリオットミサイルの輸出は、ロシアの反発を招く可能性がある。
日本は、パトリオットミサイルの輸出を通じて、米国との同盟関係を強化するとともに、国際社会における日本の存在感を高めることができる。しかし、同時に、輸出の管理や外交のバランスにも配慮することが求められる。