ウナギの完全養殖に成功!日本の食文化と資源保護の一歩
ウナギは日本の食文化に欠かせない食材ですが、国内消費量の99%以上を養殖に依存しています1。しかし、養殖に必要な種苗であるシラスウナギの天然資源量は減少の一途をたどっており、ウナギの高騰や資源保護の問題が深刻化しています2。
完全養殖とは、卵から育てたウナギの卵と精子を使って2世代目を人工ふ化させる技術です3。これにより、シラスウナギの安定供給が可能になり、ウナギの価格や資源の問題が解決されると期待されています。しかし、ウナギの完全養殖は非常に難しい技術であり、世界で初めて成功したのは2010年に水産研究・教育機構(旧水産総合研究センター)でした4。その後、2023年には近畿大学水産研究所が大学として初めて完全養殖に成功しました5。
近畿大学水産研究所では、水産研究・教育機構で開発された飼育技術を活用し、卵から育てたウナギの雌雄を親魚として、仔魚を得ることに成功しました5。仔魚の飼育は、サメ卵などの材料をポタージュスープ状に調製した餌を2時間間隔で1日5回、長いガラスのスポイトで静かに流し込んでいます6。
近畿大学水産研究所の田中秀樹教授は、「ウナギを安くするのではなく、持続可能なウナギ養殖を実現することに意義がある」と話しています2。仔魚は3〜6カ月後には養殖に必要なシラスウナギにまで成長し、約1年後には食用のサイズになると見込んでいます2。
しかし、現状の仔魚飼育技術は、特殊な小規模水槽でのみ飼育が可能なものであり、単純に水槽数の増大や水槽規模の拡大といった対策を施すだけでは大量生産の実現は困難です5。今後は、近大マグロで知られる近畿大学水産研究所がこれまでに培ってきた技術と経験をもとに、本学独自のアプローチでウナギの仔魚用飼料の改良に挑戦するとともに、シラスウナギまでの安定した生産技術の確立をめざします5。
ウナギの完全養殖に成功した近畿大学水産研究所の研究チーム
ウナギの完全養殖は、日本の食文化を守るだけでなく、世界的に減少しているウナギの資源を保護するという意義のある技術です。近畿大学水産研究所の成功は、その実現に向けた一歩となりました。しかし、まだまだ課題は多く、気軽にウナギを食べられる日はまだ遠いかもしれません。ウナギの完全養殖に関心を持ち、研究の進展を応援していきたいと思います。