大正製薬ホールディングス(HD)は11月24日、経営陣による自社買収(MBO)を実施すると発表しました。創業家の上原茂副社長が代表を務める会社が、1株8620円で株式公開買い付け(TOB)を行い、非公開化を目指します。この記事では、大正製薬HDのMBOの背景と目的、TOBの概要とスケジュール、株主の対応方法などについてまとめてご紹介します。
大正製薬HDのMBOの背景と目的
大正製薬HDは、1912年に創業した日本の大手医薬品メーカーです。自主研究による新薬開発や、一般用医薬品(OTC)の販売を行っています。現在、国内外に約30のグループ会社を持ち、世界各地で事業を展開しています。
大正製薬HDは、MBOの実施にあたり、以下のような背景と目的を説明しています12。
- 医薬品業界は、厳しい規制環境や競争状況、技術革新などにより、大きな変化に直面している。
- 大正製薬HDは、長期的な成長戦略として、自主研究による新薬開発や、海外市場への進出、M&Aなどの事業拡大を推進している。
- しかし、これらの戦略は、高いリスクや投資を伴い、短期的な業績には不利に働く可能性がある。
- そのため、株式市場の評価や株主からの圧力に左右されず、長期的な視点で事業を運営する必要がある。
- MBOにより、非公開化することで、経営の自由度を高め、より迅速かつ柔軟に戦略を実行できるようになる。
- また、創業家の上原茂副社長が代表を務める会社がTOBを実施することで、大正製薬HDの企業文化や理念を継承し、社員や取引先などのステークホルダーとの関係を維持できると考えている。
TOBの概要とスケジュール
大正製薬HDのMBOの一環として、創業家の上原茂副社長が代表を務める大手門株式会社が、大正製薬HDの全株式を対象としたTOBを実施します。TOBの概要とスケジュールは以下の通りです12。
- TOB価格は、1株8620円。これは、11月23日の終値5517円に対して、約56.3%のプレミアムとなります。
- TOB期間は、2023年11月25日から2024年1月10日まで。ただし、期間内に買い付け予定数に達しない場合は、2024年1月31日まで延長する可能性があります。
- 買い付け予定数は、大正製薬HDの発行済株式数の約90.6%にあたる7710万株。これは、大正製薬HDの株式の約9.4%を保有する創業家の上原茂副社長とその親族が、TOBに応募しないことを前提としています。
- TOBの総額は、約7100億円。これは、大正製薬HDの時価総額の約90.6%に相当します。
- TOBの資金は、大手門株式会社が三菱UFJ銀行から借り入れることで調達します。
- TOBの成立条件は、買い付け予定数の過半数以上の株式が応募されること、および大正製薬HDの株主総会で必要な議決がなされることです。
- TOBが成立した場合、大正製薬HDは、2024年3月末までに東京証券取引所から上場廃止となります。
株主の対応方法
大正製薬HDの株主は、TOBに応募するかどうかを自己の判断で決める必要があります。TOBに応募する場合は、以下の手順に従ってください12。
- TOB期間中に、大正製薬HDの株式を保有する証券会社に申し込みを行います。申し込み方法は、証券会社によって異なる場合がありますので、事前に確認してください。
- 申し込みを行った後は、TOBの成立を待ちます。TOBが成立した場合は、TOB価格で株式が買い付けられ、証券会社の口座に入金されます。TOBが成立しなかった場合は、申し込みを取り消したものとみなされ、株式は元の状態に戻ります。
- TOBに応募した場合は、応募した株式に対する配当や株主優待などの権利は失われますので、ご注意ください。
TOBに応募しない場合は、特に何もする必要はありません。ただし、TOBが成立した場合は、大正製薬HDの株式は上場廃止となり、市場での売買ができなくなります。その場合は、大手門株式会社に対して、株式の売却や買い戻しを求めることができますが、その条件はTOB価格と同じかそれ以下になる可能性があります12。