富士山噴火シナリオから見る首都圏の脆弱性と防災の必要性
富士山、日本の誇りで美しいシンボルとされる山。しかし、その裏には活火山としての危険性が潜んでいることを、1707年の宝永噴火が物語っています。歴史的な噴火では、江戸の街に2週間も火山灰が降り続きました。もし富士山が再び噴火すれば、首都圏にどのような影響が及ぶのか、政府の試算から見てみましょう。
政府の内部資料によると、宝永噴火を模したシナリオでは、首都圏の人口の約6割にあたる約4433万人が物資不足に陥る可能性があるとされています。試算によれば、噴火後2週間以内に火山灰により道路が寸断され、物資が届かない状況に陥る住民は約2700万人。降灰による停電は約3600万人に達し、最大で2670万人が避難を余儀なくされるとされています。
このような事態に備えるためには、火山灰の除去がカギとなります。内部資料によれば、確保できる作業員を考慮すると、主要な国道での1車線の開通には約3日間、2車線だと約5日間が必要とされています。道路が通行不能な状況が続けば、物資の供給や避難が難しくなる可能性があります。
政府は2022年3月、首都圏の降灰対策を議論する検討会を非公開で開催し、関係省庁や専門家を交えて内部資料を共有しました。今後、物資を運べない地域に対する対策や、避難の手段などについて議論が進むことでしょう。
富士山の噴火の可能性はゼロではなく、防災対策が喫緊の課題となっています。中央防災会議の作業部会では、藤井敏嗣東京大名誉教授が「マグマがたまっている可能性があり、いつ噴火してもおかしくない」と指摘しています。彼は、「噴火の仕方によっては首都圏の交通がまひする可能性があり、道路を開通させて物資を供給するための議論をしていくことが重要だ」とも述べています。
私たちは富士山噴火のリスクを認識し、自己防災の意識を高める必要があります。政府や自治体には、効果的な対策の検討を促すことも求められます。国民一人一人の意識と行動が、富士山噴火による災害を最小限に抑える鍵となります。