ECBと市場の金融政策見解のギャップ
欧州中央銀行(ECB)は14日、10会合連続の利上げを決定し、中銀預金金利を4%に引き上げました。しかし、この決定は市場の期待とは大きくかけ離れており、投資家は早くも2024年の利下げを織り込み始めています。ラガルドECB総裁は、利下げの議論は一切していないと強調しましたが、市場はその言葉を信じていません。なぜなら、ユーロ圏の経済成長は低迷し、インフレ率は目標を上回っているからです。この記事では、ECBと市場の見解のギャップについて分析し、今後の金融政策の展望について考察します。
ECBは利上げを続ける必要があると考える
ECBは、インフレ率を2%に戻すために、金利を十分に景気抑制的な水準に設定する必要があると考えています。ラガルド総裁は、インフレ率が2%に近づくまで、金利を高止まりさせることが重要だと述べました。ECBは、インフレ率が2023年には3.5%、2024年には2.6%、2025年には2.1%と予想しています。これは、ECBの目標とするインフレ率の「2%以下であるがそれに近い水準」を上回っています。
ECBは、インフレ率の上昇は主に一時的な要因によるものであり、エネルギー価格の急騰や供給制約の影響が徐々に薄れると見ています。しかし、ECBは、賃金の上昇や財政政策の拡張的な姿勢がインフレ圧力を高めるリスクがあるとも認めています。そのため、ECBは、インフレ率が目標に沿って安定するまで、金融政策の正常化を進める必要があると考えています。
市場は利下げを見込む
一方、市場は、ECBの利上げは経済成長をさらに妨げ、インフレ率を抑制する効果があると見ています。市場は、ユーロ圏の経済成長が2023年には1.6%、2024年には1.6%、2025年には1.5%となると予想しています。これは、ECBの予想よりも低い水準です。市場は、ユーロ圏の経済は、新型コロナウイルスの変異株の蔓延や中国の成長減速などの外部ショックに対して脆弱であり、内需も消費者の購買力や企業の収益性に影響を与えるエネルギー価格の高騰によって抑制されると見ています。
市場は、ECBの利上げがインフレ率を下押しすると考えています。市場は、インフレ率が2023年には2.9%、2024年には1.9%、2025年には1.6%となると予想しています。これは、ECBの目標を下回っています。市場は、インフレ率の上昇は一時的な要因によるものであり、エネルギー価格の下落や供給制約の緩和がインフレ率を低下させると見ています。また、市場は、賃金の上昇や財政政策の拡張的な姿勢がインフレ圧力を高めるリスクが低いと見ています。そのため、市場は、ECBがインフレ率を目標に近づけるために、利下げを行う必要があると考えています。
今後の金融政策の展望
ECBと市場の見解のギャップは、今後の金融政策の方向性について不確実性を高めています。ECBは、利上げを続ける必要があると考えていますが、市場は利下げを見込んでいます。この状況では、ECBは市場の期待を管理することが難しくなります。ECBは、市場に対して金利の水準と高止まりさせる期間を明確に伝えることが重要です。また、ECBは、経済やインフレの動向に応じて、金融政策の柔軟性を保つことが必要です。市場は、ECBの金融政策のコミュニケーションに注目するとともに、経済やインフレのデータに敏感に反応することが予想されます。ECBと市場の見解のギャップが縮まるかどうかは、今後の金融政策の動向に大きな影響を与えるでしょう。