2023年はS&P500種が歴史的な高値を更新し、投資家の間には楽観ムードが広がっています。しかし、2024年はどうなるでしょうか?金融政策の変化や企業業績、米大統領選挙など、さまざまな要因が市場の動向に影響を与える可能性があります。
1. 利下げの時期
2023年は米金融当局がインフレ抑制のために利上げを続けましたが、そのサイクルは終わりに近づいているとの見方が強まっています。市場は2024年半ばまでに利下げが始まると期待しており、「より早くより急速」な利下げを織り込んでいます。スワップ市場が想定する来年の利下げ幅は計150ベーシスポイント(1bp=0.01%)で、これは米金融当局者が見込む利下げ幅の2倍です。利下げは株式市場にとって追い風となると考えられますが、そのタイミングやペースには不確実性があります。
2. 大手ハイテク企業の業績
2023年の米株式市場の上昇を牽引したのは、人工知能(AI)を巡る熱狂を背景にしたテクノロジー大手7社でした。エヌビディアやマイクロソフトなど「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるこの7社は、2024年にも22%の増益が見込まれています。しかし、それがすでに株価に織り込まれているかどうかは不明です。ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー氏は、7社のうち6社は2024年に向けて好調に見えると指摘していますが、アップルには最先端の製品やテクノロジーが見当たらないと批判しています。
3. 米大統領選
2024年は現職大統領が2期目を目指す選挙の年です。歴史的に見ると、こうした選挙の年は米株が強気シナリオになることが多いです。ストック・トレーダーズ・アルマナックのデータによると、1949年以来、こうした選挙の年にS&P500種は平均で13%近く上昇しています。一方で現職が出ない大統領選の年は平均1.5%の下落となっています。株式が上昇する理由のひとつは、現職大統領は通常、投票前に景気とセンチメントを押し上げるために新しい政策を実施したり、減税を推し進めたりするからです。しかし、選挙の結果や政策の方向性には不確実性があります。
4. アジア:日銀、中国、インド
2023年はS&P500種が歴史的な高値を更新し、投資家の間には楽観ムードが広がっています。しかし、2024年はどうなるでしょうか?金融政策の変化や企業業績、米大統領選挙など、さまざまな要因が市場の動向に影響を与える可能性があります。
欧州の2大中央銀行が先週、政策会合を開きましたが、両中銀の政策決定は、インフレ高進への対策の道筋が非常に異なることが明らかになりました。ECBは金融緩和を継続する方針を示し、英中銀は2会合連続で利上げを実施する見通しとなりました。
5.ECBと英中銀は同調急がず
FRBが利下げ方向に転換でも1 ECBのラガルド総裁は、インフレ率が「より平たん」になるとの見通しを提示し、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下で購入した債券については、保有を減少させる方針を表明しました。しかし、利下げについては全く議論しなかったと述べ、市場の予想よりも利下げは後になるとの見方で政策当局者らはほぼ一致しているとの情報が伝わりました。
ECBは来年序盤にまずQE終了、利上げ開始はその半年後-調査2 一方、英中銀のベイリー総裁は、消費者物価抑制の闘いは「まだ道半ばだ」と述べ、インフレ率が目標の2%を大きく上回っていることを受けて、金融政策委員会(MPC)の委員9人中3人が追加利上げを支持しました。英中銀は0.5%への政策金利引き上げを発表し、3月に保有債券の縮小を開始する可能性が高まりました。
英中銀、金利据え置き6対3で決定-インフレ退治まだ「道半ば」3 これらの動きにより、欧州の2大中銀の政策は乖離(かいり)が目立つことになりました。ECBは極めてゆっくりと正常化を進める方針を示していますが、英中銀はパンデミック後の政策引き締めに向けた道筋を切り開いていく姿勢を見せています。両中銀の政策の違いは、ユーロとポンドの為替レートにも反映されており、ポンドはユーロに対して上昇傾向にあります。
欧州の2大中銀の政策の違いは、欧州株式市場にも影響を与えます。ストックス欧州600指数は2年ぶり高値水準付近にあるのですが、これは中国で財政刺激策が打ち出される可能性を踏まえたアジアへのエクスポージャーが高いシクリカル銘柄の上昇が主因となっています。一方、欧州企業の収益は軟調な域内経済に圧迫される公算が大きく、BIのデータによると、2024年は約4%増益がアナリストのコンセンサス予想となっています。
欧州の2大中銀の政策の違いは、今後も欧州株式市場の動向に影響を与えるでしょう。ECBと英中銀の金融政策には、注目しておきたいところです。