北朝鮮では2024年に施政方針を定める朝鮮労働党中央委員会総会が、12月30日に閉幕しました。世界が新冷戦時代を迎え、米中対立やロシアのウクライナ侵攻が進む中、北朝鮮は中国とロシア(ソ連)からの庇護を受け、安堵している様子です。金正恩氏も中央委員会で「社会主義諸国との関係を発展させ、変化する国際情勢に合わせて米国と西側の覇権戦略に対抗する」と強気の姿勢を示しました。
一方で、北朝鮮内では独裁政治を憂う声や社会の変化を望む人々も存在します。北朝鮮人権団体「被拉脱北人権連帯」の都希侖(ト・ヒユン)代表がかつて親交を結んだ人物が、独自の経緯で告発の舞台裏を明かしています。
告発者「チェ・イサン」と名乗る人物が、ロシア・ハバロフスクに駐在していた都希侖氏に接触したのは2014年春。KBSの北朝鮮向け放送を通じて知り合った彼らは、タブレットや衛星電話を使い、2年にわたり対話を重ねていました。チェ氏は北朝鮮観光総局の要員として派遣されており、国家保衛省に詳しい情報を提供していました。
チェ氏は日本人拉致問題についても触れ、「党が一般人の立ち入れない場所に作った訓練所の教官が日本人のようだった」という知り合いの話を伝え、拉致被害者の存在や訓練所の実態について述べていました。
やり取りが2年ほど続いた後、チェ氏は北朝鮮に戻り、都希侖氏に対し二つの提案をしました。それは「ヒョン(兄貴)は、北朝鮮の人権問題をこれからも全世界に広く伝えて欲しい」というものと、「ヒョンにはできないことがある。だから、韓国政府とつないでくれないか」とのことでした。
しかし、チェ氏の最後の連絡から数か月後、北朝鮮が金正恩氏の暗殺計画について発表。国家保衛省はCIAと国家情報院が生物・化学物質によるテロを準備していたと主張しました。
更に、北朝鮮が運営する「我が民族同士」ウェブサイトが犯人としてキム・ソンイル氏を動画で公開。都希侖氏とのやり取りの経緯に似ていましたが、キム・ソンイル氏は別人とされています。
告発者は金基三弁護士によれば、この暗殺計画が北朝鮮に漏れた原因は、文在寅政権の高官が関与していた可能性があると語ります。高官は以前から北朝鮮と連絡を取り合っており、金基三弁護士は「高官が金正恩暗殺工作の動きを独自に得た情報から北朝鮮に漏らした疑いがある」と述べています。
北朝鮮の告発から数年が経ちますが、事件の真相や消息不明となったチェ氏については未だに解明されていない状況です。