睡眠時無呼吸症候群(SAS)という言葉を聞いたことがありますか?
これは、寝ている間に何度も呼吸が止まったり弱くなったりする病気です。
SASは、睡眠の質を低下させるだけでなく、心臓や脳、血管に負担をかけて、
高血圧や脳卒中、心筋梗塞などのリスクを高めることも知られています。
そんな睡眠時無呼吸症候群の治療法の一つが、CPAP療法です。
CPAP療法とは、持続陽圧呼吸療法という意味で、睡眠時に鼻マスクを着用し、
専用の装置で鼻から気道へと圧力をかけた空気を送り込むことにより上気道を広げ、
寝ている間に気道が塞がってしまうことを防ぎ、
睡眠時も呼吸が維持されるようにする治療方法です。
CPAP療法は、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の患者に検討されます。
治療によって睡眠時に止まりがちであった呼吸が安定することによって酸素を十分に
取り込めるようになるため、これらの合併症のリスクも軽減できるといわれています。
しかし、CPAP療法は根治治療ではなく、
治療の継続により症状の改善や合併症を予防するものです。
そのため自己判断で中断せず、
気になることがあれば医師に相談しながら治療を継続するようにしましょう。
最近では、CPAP療法が梗塞の予防にも効果がある可能性が示されています。
梗塞は、終動脈や終静脈が閉塞し、血管の支配領域で虚血が起こり、血液が流れにくくなって
酸素や栄養が十分に行き届かず、
酸欠に陥った部分の細胞組織が壊死する限局性壊死の状態です。
梗塞の主な原因は、血栓や塞栓による血管閉塞で、血液中の凝固因子や血小板などが
異常に活性化して固まったものです。
CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群の患者において、血中の凝固因子や血小板の活性化を
抑えることが報告されています。
これは、睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まることで血中の酸素濃度が低下し、
その反動で交感神経が刺激されることで血圧が上昇し、血管が収縮することが
原因と考えられています。
また、CPAP療法は、心房細動の患者においても、心房細動の再発率を低下させることが
示されています。
心房細動は、心臓の上部にある心房という部分の筋肉が不規則にぴくぴく動く状態で、
心臓のポンプ機能が低下し、血液が滞りやすくなります。
このため、心房細動の患者は、血栓や塞栓による脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まります。
CPAP療法は、心房細動の原因となる交感神経の過剰刺激を抑えることで、
心房細動の予防にも寄与する可能性があると考えられています。
以上のように、CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群だけでなく、
梗塞や心房細動などの循環器疾患の予防にも効果が期待できる治療法です。
もし自分や家族に睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、早めに医師に相談してみましょう。
健康な睡眠と、心臓や血管の健康をサポートする大切な一歩かもしれません。